ビームが全反射を起こすと、反射ビームと入射ビームの間に横方向のずれが生じます。これはGoos-Hänchen(GH)効果と呼ばれています。この現象は、その興味深い物理的性質から何十年もの間、研究テーマとして注目され続けてきました。
近年、プラズモニック材料やメタマテリアルが登場し、再び注目を集めています。また、GHシフトを利用したセンサー方式も提案され、生化学、熱、波長モニターなどのセンサーに応用されています。
これらのセンサーの感度は、GHシフト量に直接関係するため、大きなGHシフト(正または負)を実現することが実用的な関心事となっています。
参考論文[1]では、大きなGHシフトを実現するために導波モード共振を利用する可能性が提案されています。 図 1 に示すように、基板側から基板の臨界角以上の角度で入射すると、誘電体グレーティングが施された基板表面で全反射されることになります。
この入射光がグレーティングのリーキーモードに結合すると、導波路内に強いエネルギー流が存在することになり、巨大なGHシフトが実現できます。リーキーモードが負の伝播モードである場合(すなわち、エネルギー流がモードの波数ベクトルに反平行である場合)、負の GH シフトが期待されます。
図1. 誘電体グレーティングと内部全反射によるGHシフトの模式図。 格子の仕様は、Γ = a/ Λ(デューティサイクル)、Λ = 0.43um, Γ = 0.93, t = 0.11um, ɛ = 12.12, ɛl = 1(空気)、ɛs = 2.09(SiO2)
GHシフトは次のように定義されます:
ここで、Ɵは基板側からの平面波の入射角、ɸは反射係数の位相、kは入射側の媒質内部の波数、kx =k sin(Ɵ)です。
k0とkxは、基板内では0次回折(直接反射)のみが伝搬し、高次回折モードはすべてエバネッセント光になるように、また、空気中では0次と高次の回折モードがともにエバネッセント光になるように選択されています。入射光の波長が1.5umの場合、上記はkxが0.287 ∼ 0.414×2 π/ Λ、またはƟが43.8 ∼ 90◦に相当します。
RCWAのプログラムDiffractMODを用いると、入射角を変化させて0次回折次数の位相とkxを評価することができます。
図2. RSoft CAD環境での構造体のセットアップ(左)と1周期分格子の屈折率分布(右)
シミュレーションの結果は図3のようになりました。反射率位相のカーブは、kx = 0.38×2π /Λ、もしくはƟ = 67.0度付近で、ほぼ2πの急激な増加を示しています。位相が急峻に増加するのと同じkxの値で、GHシフトのカーブに急激なディップが観測されます。
また、GHシフト量は最大で-1000um以上となります。図4は、kx = 0.38×2π /Λにおける電界とポインティングベクトルの分布です。このkx点では、電界は+x方向に向かいますが、エネルギーは逆方向を向いています。
図3. 基板から波長1.5umで入射した場合の反射係数とGHシフトの位相とkxの関係
図4. kx = 0.38×2π/ Λにおける電界Eyとポインティングベクトルの瞬間分布(負のGHシフトの大きさが最大)
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