Optical and Photonic Solutions Blog~日本語版~
公開日:2023年12月28日
イメージング光学系のプリンシパル・エンジニアの Blake Crowther博士が火星探査機パーサヴィアランス(Perseverance)に搭載されたズームカメラの設計の目的、課題、そして最も達成感を感じた瞬間について語ります。
シノプシスの光学エンジニアはMalin Space Science Systems社、Motiv Space Systems社、アリゾナ州立大学と共同で、CODE Vを使用してMastcam-Zのズームレンズシステムを設計しました。
回答:過去10年から20年にわたる火星へのいくつかのミッションは、火星にかつて液体の水が存在し、微生物生命が存在しうる環境を提供していた可能性があることを示しました。
マーズ2020ミッションの主な目的は、火星の過去における生物の生息可能性を探査し、将来のミッションで地球に持ち帰ることができるサンプル一式を採取することです。2021年2月18日、探査機はカメラやその他の科学機器を搭載し、火星のジェゼロクレーターに着陸しました。
光学設計に関しては、このミッションの主要目標を達成するために、可変倍率でのカラーステレオ撮像が必要とされました。探査機のリモートセンシングマストに搭載された2台のMastcam-Zカメラは、目的の画像を提供してくれます。
Mastcam-Zカメラは、惑星間や深宇宙での利用用途で初のズームレンズを使用しており、Mastcam-Zの”Z”はZoomを意味します。ズーム機能に加えて、レンズは幅広い対象距離で焦点を合わせることもできます。
回答:大変だったことのひとつは、大規模なモデリングが必要だったことです。私たちは、製造されたレンズがあらゆる運用条件下で必要な画質を提供できることを確認しなければなりませんでした。そのため、すべての製造工程とその結果生じる公差をモデル化しました。また、さまざまな環境下でのレンズのモデル化も行いました。このような解析を行う際には、多くの変数を考慮しなければなりません。それは非常にやりがいのあることでした。
回答:達成感を感じた瞬間はいくつかありました。ひとつは、すべてのレビュアーに、このレンズがあらゆる使用条件下で優れた画質を生み出すことを証明でき、そしてそのレンズが採用されたことです。
また、カメラの実装モデルから最初の画像を受け取った時も満足しました。このモデルは、実際に飛行はしなかったものの、レンズのハードウェアが機能することを実証するために使用されました。
最も達成感を感じた瞬間は、Mastcam-Zの最初の画像が火星から送られてきたときです。画像はとても鮮明で、地形や地質が驚くほど詳細に映し出されていました。その画像を見るまで、私たちはハラハラドキドキでした。
回答:光学設計において、特に今までにないような新しいものは困難を極めます。設計を続けることが重要で、入力条件が変われば必要に応じて設計を繰り返し変更します。迅速に設計を進めてください。設計の成果を何度も証明しなければならないかもしれませんが、それを続けてください。
今日のCODE Vの設計ツールやモデリングツールはかつてないほど優れていますが、設計するには知的な設計者が必要です。また、設計するときは正直に。問題があれば、それを認め、解決策を見つける努力をすることだと思います。
Mars 2020 Perseveranceのレンダリング(NASA/JPL-Caltech提供)
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