Optical and Photonic Solutions Blog~日本語版~
公開日:2023年8月3日
迷光とは、光学システムの意図された機能を妨げる不要な電磁放射のことです。迷光の例としては、主に光学面からの反射が原因のゴースト像や、非光学面からの反射や散乱が原因のフレアがあります。このゴースト像やフレアは、カメラレンズやマウント構造に起因します。迷光解析はこれらの現象の原因を見つけ、光学設計における影響を最小限に抑えるのに役立ちます。
シノプシスが提供する光学設計解析ソフトウェアCODE Vと照明設計解析ソフトウェアLightToolsは、製造前にシステム内の迷光の影響を特定し、対処するための優れたワークフローを提供します。この記事では、スマートフォンカメラを例に、ワークフローの概要を紹介します。
スマートフォンカメラで撮影した写真のフレアとゴーストの例
CODE VとLightToolsは、高度な光学設計、最適化、製造サポート機能を提供します。これらは、設計プロセスの初期段階で迷光の影響を特定し、最小限に抑えるための非常に効果的なワークフローを実現します。
ワークフローは次のステップで構成されています。
CODE V(左)で設計されたスマートフォンのカメラシステムをLightTools(右)にインポートし、
光学機構部品を追加して迷光解析を実行します。
最初のステップは、光学性能要件を満たすためにCODE Vでレンズを設計することです。この記事で示す例は、1/3インチCMOSセンサー用の特許取得済みコンパクトレンズモジュール(米国特許第7,646,552号)を含むスマートフォン用レンズモデルを取り上げています。下図に示すように、1~4はレンズ、5はIRカットフィルターまたはカバープレート、6はCMOSセンサーです。
CODE Vを用いたスマートフォンカメラ設計
この設計のために非球面はQcon非球面に変換されています。Qcon非球面は、ベースコーニックからの非球面のサグ偏差によって特徴づけられます。この非球面の定式化により、設計者は非球面項を高度に制御することができ、製造と試験における不必要な複雑さを回避してコストを削減することができます。CODE Vは面形状を維持したまま、非球面を簡単にQcon非球面に変換する機能を備えています。
スマートフォンカメラでは、センサー内の金属ワイヤーの反射率が大きいため、センサーがゴースト像の原因となることがあります。センサーの内部構造で反射した光は、レンズ表面で反射してセンサーに戻ってくる可能性があります。
CODE Vには、ゴースト像を解析するための次のような強力な機能があります。
ゴースト像解析機能とghost_viewマクロは、表形式とビジュアル形式でデータを提供します。解析は高速で、詳細な解析や最適化制御のために面ペアを簡単に切り分けることができます。@GHOSTマクロ関数を使用すると、制御する面ペアを指定して、最適化中にゴースト像のディスクサイズを制御できます。
以下は、ghost_viewマクロによる、画角2度からのゴースト像の光路の例です。
CODE Vでのゴースト像解析
CODE Vでレンズ設計とゴースト解析が完了したら、設計データをLightToolsに出力し、光学機構設計とフレア解析を実行します。
CODE VとLightTools間の相互連携機能は、高精度の光学製品シミュレーションを実現します。CODE Vのサーフェスベースのモデルは、LightToolsのソリッドモデルに自動的に変換され、設計の更新は製品間でシームレスに維持されます。CODE Vのサーフェス形状は、LightToolsで光学特性、受光器、光源を適用しても維持されます。
スマートフォンのカメラ設計データをLightToolsに取り込む際、目標領域を絞り面に設定したランバート光源を遠方に追加しました。また、受光器のサイズを正しく設定するために、像面上にエッジアパチャーを定義し、光学系のハウジングを追加しました。最後に、レンズ、ハウジング、受光器の光学特性を調整し、照明シミュレーションの準備が完了しました。
LightToolsで定義されたレンズハウジング
LightToolsのレイパス解析機能は、光線がシステムを通過する際に通る個々の経路を記録するもので、ゴースト像の定量的解析に特に役立ちます。レイパス解析によって、ゴーストや迷光放射照度の原因となる面を明らかにし、曲率の修正、コーティングの変更、表面処理の変更など、これらの影響を最小限に抑えるための設計プロセスにおける次のステップを判断できます。
さらに、照度または強度データを生成するために順方向シミュレーションを使用するユーザは、受光器から得られた結果のうち、特定の部分を調べるために範囲解析を実行することができます。シミュレーションを実行した後、カーソルを使用して LightTools LumViewer のチャート上の長方形部分の境界をスケッチし、その部分データにどの光線が寄与しているかを確認できます。これにより、個々のゴースト光線やその他の迷光がどこから来ているのかをより深く理解することができます。どの光学面が迷光の強度全体に最も寄与しているかを知ることは、どの面に反射防止コーティングが必要かを判断するのに役立ちます。
LightToolsの部分分析例
LightTools のレイパス解析を使用すると、センサー(受光器)上に個々のゴースト像を作成する光学システム内のさまざまなレイパスを表示できます。このデータは、例えば、センサーに入射する不要なパワーの量を特定したり、レーザー損傷を受けやすいシステムを評価する際に明瞭なゴースト像を探してピークパワーを特定できます。下図では、レイパスフィルタが適用されています。シミュレーションが実行されると、レイパスフィルタは光学系内のすべての潜在的な光線列のリストを提供します。個々のパワーまたは照度の影響度に従ってレイパスを並べ替えることができます。図は、光学系内のさまざまなレイパスのゴースト像(輝度分布)を示しています。
光学系内の様々なレイパスのゴースト像を示すLightToolsの部分分析
迷光解析に役立つLightToolsのその他の機能には、次のようなものがあります。
最後のステップとして、CODE Vで設計をさらに最適化し、特定の面ペアからのゴースト像のサイズを制御することができます。これは、サンプルマクロによって定義されるマクロ関数@GHOSTを使用したユーザー定義制約条件で簡単に実現できます。また、実光線に関する制約条件を利用して屈折光線が面法線から離れるようにすることで、センサー-レンズ間のゴーストを制御することもできます。
CODE VやLightToolsの新機能および迷光解析に関する情報は、次のコンテンツも合わせてご覧ください。
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