Optical and Photonic Solutions Blog~日本語版~

公開日:2024年7月31日

光学技術において画期的な進歩を遂げたメタレンズは、薄く平らな表面であり、従来のレンズを補強して幅広い用途に使用することができます。しかし、メタレンズの開発は、設計ワークフローが複雑であるため非常に難易度が高いです。メタレンズは通常、メタアトムと呼ばれる数百万のサブ波長ユニットセルから構成されます。メタアトムの光学特性をシミュレーションするにはマクスウェル方程式を用いたソルバーが必要ですが、これをミリメートル・スケールの表面で近似なしに行うことは困難です。シノプシスは、この設計ワークフローを正確かつ効率的に行う設計ツールを提供しています。

この記事では、光線ベースの結像光学系自動設計ツールCODE Vと波動光学系の逆設計ツールMetaOptic Designerを組み合わせて超広角メタレンズイメージングシステムを設計することにより、メタレンズ設計の課題を解決する方法を紹介します。


メタアトムの光学特性の計算

メタレンズは、ナノ構造を使って波面を調整する光学素子です。これらのナノ構造はしばしばメタアトムと呼ばれます。このメタアトムは、ナノ構造からの高次回折を取り除くために、サブ波長間隔でメタサーフェス上に配置されています。またメタアトムは、入射フィールドの位相と透過率を変化させることができます。この光学特性の変更は、メタアトムの材料、形状、配向などの要因に依存します。設計ツールを用いることで、メタアトムの設計パラメータを空間的に変化させ、波面制御を変化させることができます。

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図1:メタレンズと様々なメタアトム

メタレンズ設計に関連するメタアトムの光学特性は、双方向散乱分布関数(BSDF)データベースで定義できます。シノプシスは、RSoft の DiffractMOD RCWAやFullWAVE FDTDなど、メタアトム・データベースを計算するためのツールを提供しています。このデータベースは、光線ベースの設計手法を用いるCODE Vと波動光学ベースの逆設計ツールMetaOptic Designerの両方で使用できます。

以下で紹介する事例では、SiO2基板上のナノピラーを六角形に配列したものをメタアトムとして使用します。ピラーの直径を変化させ、位相遅延を求めました。RSoftのBSDF生成ユーティリティを使えば、メタアトムの光学特性を簡単に計算できます。

CODE Vを使ったメタレンズの設計

メタレンズの設計の出発点を生成するために、CODE Vバージョン2024.03で利用可能なCODE V MetaOptic Design機能を使用します。

メタレンズ表面上のメタアトム形状はパラメータ分布を多項式関数で定義します。BSDFデータベースにアクセスすることにより、CODE Vはメタアトム伝達関数の角度依存性と波長依存性を考慮します。

CODE Vの光線ベースの手法は、メタレンズを回折光学素子と同様に扱います。CODE Vは、最適な位相を設計する代わりに、メタアトム設計パラメータの分布を直接設計します。以下の図2の例に示すように、設計パラメータを表す多項式の係数を変化させ、光学性能を最適化します。CODE V の光線ベース設計フローの第 2 段階では、メタレンズ上の設計パラメータの最大値と最小値を変化させることで、透過率を最適化します。最終的に、CODE Vで製造用のGDSファイルを生成することができます。

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図2:設計に使用したメタアトム(左)とCODE Vのメタオプティックモジュールで設計された

視野角170度の超広角メタレンズの側面図(右)

MetaOptic Designerによるさらなる最適化

CODE Vの光線ベースの設計は、図3に示すように、解析とさらなる最適化のためにMetaOptic Designerに簡単にインポートすることができます。

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図3:CODE Vで設計したものをMetaOptic Designerにインポートして解析

逆設計機能を用いるMetaOptic Designerでは、サーフェス上のメタアトムの設計パラメータ分布関数を自由に変化させることができます。この設計の自由度により、メタレンズのさらなる最適化が可能になります。MetaOptic Designerでの最適化後、MTFと集光効率はともに改善されました。最終的な設計をGDSデータファイルとしてエクスポートしたものを図4に示します。GDSファイルは最適化された設計パラメータに基づくマスク情報を提供し、六角形の配列で生成されます。

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図4:1mmメタレンズのGDSレイアウト

FDTDによる検証

CODE V MetaOptic モジュールとMetaOptic Designerの両方で考慮されている局所的な周期近似を使用することによってもたらされる影響をテストするために、厳密な有限差分時間領域ソルバーであるRSoft FullWave FDTDを使用して設計を検証します。結果を図5に示します。FullWAVE FDTDは、CODE V メタオプティックモジュールとMetaOptic Designerで実行された最適化を検証し、異なる入射角(ここでは0°, 45°, 60°)に対してフィールドの像面が明確に定義されていることを示しています。

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図5:最終設計のFDTDによる検証

結論

ここでは、シノプシスのツールを使用した超広角メタレンズの設計例を紹介しました。シノプシスは、メタアトム計算と設計ワークフロー全体の効率化を実現する包括的なソリューションを提供しています。シノプシスのツールは、光線光学、ナノフォトニクス、リソグラフィの専門家によって開発されており、メタレンズ設計プロセスを効率的に進めることができます。光学設計に製造意識をもたらし、設計ワークフローを合理化することで、光学システム設計におけるメタレンズの普及を促進したいと考えています。

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