ニュースリリース - 2014年10月14日

組込みLinuxアプリケーション向けに性能を2倍に向上した新製品DesignWare ARC HS38プロセッサ

大幅に性能向上し、40-bit フィジカル・アドレスと2次キャッシュをサポートするARC 770Dの後継プロセッサ

概要

  • 拡張性の高いARCv2アーキテクチャをベースに開発され、成長著しいLinuxベース組込みアプリケーション向けに最適化された新しい32-bit プロセッサ・コア
  • 一般的な28nmプロセスで、消費電力を90ミリワット以下、面積をわずか0.21mm2 に抑えつつ、4200DMIPS以上の処理性能を実現
  • 組込みLinux アプリケーションを実行するハイエンド・ネットワーク機器、車載機器、デジタルホーム機器向けに最適化
  • 1、2、4個のコア構成の選択と、1次キャッシュ・コヒーレンシおよび2次キャッシュ、シンメトリック・マルチプロセッシング(SMP)のサポートにより、高い性能拡張性を提供
  • ソフトウェア開発ツール、ハードウェア、ミドルウェア、オペレーティングシステム(最適化されたLinux カーネル含む)からなる堅牢なエコシステムの提供により、HS38ベースのシステム開発を短期化


2014年10月14日 カリフォルニア州マウンテンビュー発 – 
半導体やエレクトロニクス・システムのイノベーションを加速させる開発用ソフトウェア、IP、技術サービスの世界的リーダーであるシノプシス(Synopsys, Inc.、Nasdaq上場コード:SNPS)は本日、高性能プロセッサIPコア ARC HSファミリーの新製品 DesignWare ARC HS38 Processor を発表した。この32-bitプロセッサ・コア ARC HS38は、 HS34 and HS36プロセッサと同様、電力効率(DMIPS/mW)と面積効率(DMIPS/mm2)を追求したアーキテクチャで、組込みLinux や他のハイエンドOSをサポートする機能を搭載している。一般的な28nmプロセスで実装した場合、単一コア構成で、最大2.2 GHzの動作周波数で4200DMIPSもの処理性能を実現、これはLinux をサポートする前世代プロセッサ ARC 770Dコアの2倍となる。この処理性能と低消費電力特性は、ホーム・ルーター/ゲートウェイ、データセンター、デジタルTVネットワーク機器、車載インフォテイメント機器といったデバイスで需要が拡大している組込み制御/信号処理機能の実現にとって理想的である。

EZchip Technologies社 CTO Guy Koren氏は次のように語っている。「当社では、ネットワーク・プロセッサ NPS-400の開発に当たってARC 770Dを採用しました。低消費電力でありながら処理性能が高いことと、インストラクション・セットの拡張性の高さが決め手でした。プロセッサをARC HS38にアップグレードすることによって、同じ数のプロセッサ構成ではるかに高い性能を実現でき、伝送チャネル密度をさらに上げることができます。NPS-400プロジェクトにとって、SMP Linux のサポートは、お客様のソフトウェア・プログラミングを容易化するための重要な課題でした。当社は、シノプシス社との協業によりSMP Linux カーネルの最適化を達成しましたが、これはARC HS38でも活用できます」

ARC HSプロセッサ・ファミリーは、次世代のARCv2 Instruction Set Architecture(ISA)を採用しており、低消費電力/小面積でありながら高性能な組込みデザインを実現できる。HSファミリーの新製品 HS38は、Linux ベース組込みアプリケーション向けに最適化されており、最大1.93DMIPS/MHz という高い性能効率を提供する。一般的な28nmプロセスで、消費電力を90ミリワット以下、面積をわずか0.21mm2 に抑えつつ、2.2GHz という動作性能を実現する。また、40-bit フィジカル・アドレス・スペースと最大16メガバイトのページサイズをサポートするフル機能のメモリー管理ユニット(MMU)を搭載しているため、設計者は、高速なデータアクセスとより高いシステムパフォーマンス、およびテラバイト級のメモリーに直接アクセスする能力を手にすることができる。HS38は、マルチコア(2または4個)構成も可能で、SMP Linux、フルレンジの1次キャッシュ・コヒーレンシおよび最大8MBの2次キャッシュをサポートしている。また、オプションの浮動小数点ユニットにより、単精度および倍精度の算術演算命令で計算を加速できる。他のARCプロセッサ同様、非常にコンフィギュアビリティの高いアーキテクチャとなっているため、ユーザーは開発対象のデザインに最適なハードウェア特性を得られる。また、拡張性も高いためプロセッサと緊密に統合した独自ハードウェア・アクセラレータの開発も容易になる。

Linley Group社 主席アナリスト Linley Gwennap氏は次のように語っている。「シノプシス社は、ARC770プロセッサの素晴らしい後継製品を開発しました。ホームルーター、モバイル・インターネット機器、、車載インフォテイメント機器などに搭載されるシステムは複雑化する一方で、しかも消費電力を増加させること無くこれまで以上に優れた機能と動作性能を実現しなければなりません。ARC HS38プロセッサは、40-bit フィジカル・アドレス・スペース、1次キャッシュ・コヒーレンシ、2次キャッシュのサポートにより、こうした急速に進化するハイエンド組込み機器の現在および将来のニーズに対応できる独自のメリットを提供しています」

ARCプロセッサ・ファミリー向け組込みソフトウェアの開発/デバッグ/最適化を支援する完全なソリューションであるDesignWare ARC MetaWare Development Toolkit は、ARC HS38プロセッサもサポートしている。MetaWare Toolkit は、非常に処理効率の高いコード生成を実行するC/C++コンパイラ、ソフトウェア内部の観測性を最大限に高めるデバッガ、ハードウェア完成前のソフトウェア開発のためのインストラクション・セット・シミュレータ(ISS)を提供する。また、プロセッサとペリフェラルで構成するARC HS Processor Family Virtualizer Development Kit (VDK)を活用すれば、SoCが完成する前段階から仮想プロトタイプ上でソフトウェアの実行/デバッグを行うことができ、完全サイクル精度シミュレータで、デザインの最適化と検証を実行できる。HS38プロセッサ向けオープンソース・ソフトウェアとしては、最適化されたLinux カーネル、GNU Compiler Collection(GCC)、GNU Project Debugger(GDB)や関連するGNU プログラミング・ユーティリティなどがある。またソフトウェア開発支援のため、ARC AXS103 Software Development Platform が、豊富なペリフェラル群、ドライバ、あらかじめビルドされたLinux イメージ、リファレンス・アプリケーションなどからなる完全な開発環境を提供している。サードパーティ・パートナー各社からも、各種のARC HSプロセッサ向けソフトウェア開発を支援するハードウェア/ソフトウェア・ツールが提供されているため、開発者は、自分の開発プロジェクトに最適な、あるいは使い慣れたツール環境を柔軟に選択できる。

ARC HSプロセッサ・ファミリーは、SoC統合を容易化しシステム性能を最大化する独自の機能を提供している。クローズ・カップル・メモリー(CCM)とシングルサイクルでSoCのすべてのペリフェラルのレジスタにアクセスできるダイレクト・マップ・ペリフェラル機能のサポートにより、ペリフェラルアクセスの性能を向上させシステム・レイテンシを削減することができる。ARC Processor Extension(APEX)テクノロジにより、カスタム・インストラクションや自身のRTLを使用してユーザー定義のハードウェアをコアに追加することもできるため、消費電力を抑えつつアプリケーションに固有なプログラム・コードを加速できる。HS38コアを含めたHSファミリーは、非常にコンフィギュアビリティの高いアーキテクチャとなっているため、SoC上の各インスタンスにあわせてカスタマイズできる。I/Oコヒーレンシ、32 ビットあるいは64 ビットのトランザクション合わせてコンフィギュレーションできるARM® AMBA® AXITM、AHBTMのネイティブサポートや、単精度・倍精度(または両方)に対応したオプションの浮動小数点ユニットにより、HSプロセッサは、性能と消費電力の最適なバランスで実装することができる。

シノプシス IP&プロトタイピング マーケティング担当副社長 John Koeter は次のように述べている。「次世代のエレクトロニクス製品の開発にあたっては、SoC開発者は、より小さな面積と消費電力という制約を満たしながら、より高い性能と機能を実装していかなければなりません。ハイエンドの組込み製品ではLinuxベースの製品が増加しています。HS38プロセッサは、高機能なオペレーティング・システムをサポートしたARCプロセッサ群をさらに進化させ、ARCv2アーキテクチャとHSファミリーの高い性能をLinux ベース組込みシステム開発者の皆様にお届けします」

提供可能時期と参考情報
The DesignWare ARC HS38 Processor、ARC HS Family VDK、ARC AXS103 Software Development Platform は、2014年12月の一般提供開始を予定している。シノプシスのLynx Design SystemへのARC HS38テクノロジ・プラグインも2014年12月の提供開始を予定しており、チップレベル統合と最適化にかかる期間を短縮するため事前にチューンナップ済みのデザイン・フロー・スクリプト、制約条件、ツール・セッティングを提供する。MetaWare Development Toolkit、Linuxカーネル、GNU Toolchainは既に提供を開始している。詳細情報はhttp://www.synopsys.com/arc より入手可能。

DesignWare IPについて
シノプシスは、システムオンチップ向けの高品質かつシリコン実証済みIPのリーディング・プロバイダである。シノプシスの多岐にわたるDesignWare IP群は、デジタル・コントローラIP/PHY/次世代検証用IPからなる完全なインターフェイス(業界標準プロトコル)IP、アナログIP、組込みメモリー、ロジック・ライブラリ、プロセッサ・コアならびにサブシステムで構成されている。短期間でのプロトタイプ開発、ソフトウェア開発、SoCへのIP統合を可能にするため、シノプシスのIP Acceleratedイニシャティブは、IPプロトタイピング・キット、IPソフトウェア開発キット、カスタマイズ済みIPサブシステムを提供している。シノプシスのIPソリューションは、信頼性の高い開発手法、品質確保のための巨額の投資の所産であるだけでなく、包括的な技術サポートとともに提供されているため、設計者は、IPのSoCへの統合リスクを最小化し、最終製品の市場投入までにかかる期間を短縮することができる。詳細情報はhttp://www.synopsys.com/designwareより入手可能。

シノプシスについて
Synopsys, Inc. (Nasdaq上場コード:SNPS) は、グローバル・エレクトロニクス・マーケットでテクノロジ・イノベーションを展開している。そのソフトウェア製品、IP、技術サービスは、エンジニアが直面する設計/検証/システム開発/製造の課題の解決を支援しており、シノプシスは電子設計自動化 (EDA) ならびに設計資産 (IP) のリーディング・カンパニーとなっている。1986年の創業以来、世界中のエンジニアがシノプシスのテクノロジを使用して、何十億もの半導体やシステム機器を設計開発している。詳細な情報は、 http://www.synopsys.com/japan より入手可能。

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<お問い合わせ先>

日本シノプシス合同会社 フィールド・マーケティング・グループ 藤井 浩充 
TEL: 03-6746-3940  FAX: 03-6746-3941